中小企業・フリーランス必見!クラウド会計の選び方と導入成功の秘訣

中小企業・フリーランス必見!クラウド会計の選び方と導入成功の秘訣

「クラウド会計を導入したいけれど、どれを選べばいいか分からない」――そんな相談をお客様から受けることは少なくありません。

実は、中小企業とフリーランスでは、クラウド会計ソフトに求められる機能や優先すべきポイントが大きく異なります。たとえば、法人向けソフトと個人事業主向けソフトでは、そもそも対応している申告書式や機能が根本的に違います。これは、法人税・住民税・事業税の申告が必要な法人と、所得税の確定申告が中心となるフリーランスとでは、会計・税務の仕組みそのものが異なるためです。

また、クラウド会計は一度導入すると、データ移行や設定変更に大きな手間が掛かるため、後から「やっぱり別のソフトにすればよかった」と後悔しやすいのも実情です。つまり、最初の選択で自分の事業に本当に合ったソフトを選ぶことが何より大切になります。

本記事では、「中小企業」「フリーランス」という立場ごとに分けて、クラウド会計ソフトの失敗しない選び方と導入を成功させるための秘訣を、代表的なサービスであるマネーフォワードfreeeを例にわかりやすく解説していきます。

クラウド会計を導入するメリット

自動化による入力作業の削減

従来の経理といえば、銀行通帳やクレジットカードの明細を見ながら、ひとつひとつExcelに打ち込む作業が中心でした。まるで「砂時計の砂を一粒ずつ落としている」ような地道な作業に、毎月何時間も費やしていた方も少なくありません。

クラウド会計を導入すると、こうした単純作業の大半が自動化されます。銀行口座やカード明細を自動で取り込み、AIが仕訳候補を提示してくれるので、あとは内容を確認して承認するだけ。仕訳科目に迷う時間も大幅に減り、夜遅くまで続いていた入力作業から解放されます。

この効率化は単に「楽になる」だけではありません。数字を早く把握できるようになることで、経営判断のスピードも上がります。「今月は広告費が増えているな」「売上に対して交際費が多すぎないか」など、数字をもとに経営をコントロールできる環境が整うのです。

オンライン対応による効率化

クラウド会計のもうひとつの魅力は「場所に縛られない」ことです。インターネットさえあれば、自宅でも、出張先でも、さらには移動中の新幹線の中でもアクセスが可能です。

例えば、経理担当者が自宅で仕訳を入力し、社長が外出先のカフェで数字をチェック、税理士は事務所からリアルタイムにコメントを残す──。これまで紙の資料を持ち寄って「ここを見てください」と突き合わせていたやり取りが、まるでGoogleドキュメントでの共同編集のようにスムーズになります。

特にコロナ禍以降、テレワークや時差出勤を取り入れる企業が増えています。クラウド会計は、こうした新しい働き方に柔軟に適応できる仕組みを自然に整えてくれるのです。

ペーパーレス化や法令対応のしやすさ

「経理=紙の山」というイメージを持っている方も多いでしょう。机の上に積み上がった領収書、キャビネットを埋め尽くすファイル…。クラウド会計を導入すると、これらが一気に解消されます。

領収書や請求書はスマホで撮影してそのまま保存。電子帳簿保存法に対応しているので「この保存方法で大丈夫だろうか」と心配する必要もありません。過去の資料を探すときも、検索ボックスに日付や金額を入れるだけで一瞬で見つかります。

これまで書類を探すのに30分かかっていたのが数秒で済む──そんな変化は、経理担当者だけでなく、経営者にとっても大きな安心につながります。
(※電子帳簿保存法の詳細は後日掲載予定「マネーフォワードでできる電子帳簿保存法対応完全ガイド」をご参照ください。)

クラウド会計にはこのように多くのメリットがありますが、導入を検討する際には「どのサービスを選ぶか」も重要なポイントです。代表的なマネーフォワードとfreeeは機能や使い勝手に違いがあり、事業規模や経理体制によって向き不向きが変わってきます。
次の記事ではその違いをより詳しく解説していますので、あわせてご覧いただくと理解が一層深まるはずです。
迷ったらこれ!マネーフォワードとfreeeの違いを分かりやすく解説クラウド会計導入で経理業務がぐっとラクになる方法

中小企業向け クラウド会計の選び方

クラウド会計を選ぶときに大切なのは「どのソフトが一番有名か」ではなく「自社に合っているか」です。たとえるなら、靴を選ぶときにブランド名よりも「自分の足にフィットするかどうか」が重要なのと同じです。ここでは中小企業が実際に使う場面をイメージしながら、チェックすべきポイントを整理してみましょう。

複数人利用・権限管理のしやすさ

中小企業では経理担当者ひとりで完結するケースもありますが、事業が成長すれば複数人で関わることが自然に増えていきます。経理担当者が入力を行い、社長が数字を確認し、さらに外部の税理士がアドバイスをする──。そんな場面では、ユーザー権限の設定がしやすいかどうかが重要になります。

たとえば、経理担当者には「入力のみ」、経営者には「全体を閲覧できる権限」、税理士には「必要な範囲だけアクセスできる権限」といった使い分けができれば安心です。これは、オフィスの鍵を「全部屋に入れるマスターキー」「会議室だけ入れる鍵」と分けて渡すようなイメージです。

さらに事業が拡大すると、経理の中でも「請求管理担当」「経費精算担当」「預貯金管理担当」と分業が進むこともあります。そのときにシステムが対応できるかどうかは、後々大きな差を生みます。

チェックしたいのは以下のポイントです。

  • 同時利用ユーザー数に制限がない/十分か
  • 閲覧・編集・承認などの権限が細かく設定できるか
  • 操作履歴(ログ)が残り、トラブル時に追跡できるか

こうした機能があると「誰が、いつ、どのデータを触ったのか」が明確になり、社内管理もスムーズになります。

請求書・給与計算・在庫管理との連携

会計ソフトは単なる「記録帳」ではなく、むしろ「経理のハブ(中心)」として働くのが理想です。請求書を発行したら自動で売上が記帳され、給与を計算したら自動で仕訳が登録される。もし在庫管理と連携していれば、売上や仕入の情報もスムーズに会計へ反映されます。

イメージするなら「電車の乗り換え」がスムーズにできる駅のようなもの。各システムがバラバラだと、毎回改札を出て切符を買い直すような手間がかかりますが、連携がしっかりしていればワンタッチで乗り換えできるわけです。

実際に、主要なクラウド会計ソフトでの対応状況は次のようになります。

項目マネーフォワードfreee
請求書作成○ クラウド請求書と連携○ 会計ソフト内で対応
給与計算○ クラウド給与等と連携○ freee人事労務と連携
在庫管理△ 外部システム連携△ 外部システム連携

※○は基本料金内で利用できるもの。△は外部システムやExcel取込を前提としています。

自社の業務が「請求・給与・在庫」のどこに重点があるかを考え、それに合わせてシステムを選ぶのがポイントです。

顧問税理士との相性・サポート体制

最後に意外と見落とされがちなのが「顧問税理士との相性」です。どんなに高性能なソフトでも、サポートしてくれる専門家がそのシステムに不慣れだと効果を発揮できません。

たとえば、freeeで仕訳入力をしているのに、税理士が弥生会計しか使ったことがないと「データの読み込みが分からない」「チェックに時間がかかる」といった事態が起こり得ます。結果的に「ソフトの便利さが相殺されてしまう」ことになりかねません。

ですから、導入前には必ず「現在契約している、あるいはこれから契約する税理士がそのクラウド会計に対応しているか」を確認しましょう。初期設定や運用ルールづくりのサポートを受けられれば、ソフトを導入したその日からスムーズに走り出すことができます。

クラウド会計の選定は、単なるITツールの比較ではなく「会社の経理体制全体をどう整えるか」という視点で考えることが大切です。

フリーランス向け クラウド会計の選び方

初心者でも直感的に使えるか

フリーランスになったとたん、避けて通れないのが経理です。
会社員時代は給与明細を受け取るだけで、税金や社会保険の手続きはすべて会社任せ。しかし独立した瞬間から、「自分が経理担当者」という現実に直面します。

このときに感じるのが、「なるべく経理には触れたくない」という本音。だからこそ、初心者でも直感的に操作できるクラウド会計ソフトを選ぶことが何より大切です。

たとえば、レシートをスマホで撮影するだけでAIが自動で仕訳してくれる機能があれば、まるで「経理の家庭教師が横に座ってくれている」ような安心感があります。
ストレスなく経理を進めるために、次のチェックポイントを押さえておきましょう。

  • スマホアプリ中心でも運用できる
  • AI自動仕訳で大半が完結する
  • 画面が分かりやすくヘルプやガイドが充実している

確定申告に必要な帳票が自動で出せるか

確定申告シーズンになると、多くのフリーランスが「もっと早く準備しておけばよかった」と嘆きます。
そんな時、クラウド会計ソフトがあれば状況は一変。

たとえば、スマホで撮ったレシートが自動で仕訳され、決算期には必要な「青色申告決算書」や「収支内訳書」が一瞬で出力されます。これはまるで「ポケットの中に経理担当者がいる」ような心強さ。さらに、e-Taxへ直接送信できれば、税務署に足を運ぶ必要すらありません。

実際、マネーフォワードとfreeeはどちらもこの機能に対応しています。

項目マネーフォワードfreee備考
青色申告決算書の自動作成対応対応所得計算で有利な「青色申告特別控除」などを受けるために必須の書式
収支内訳書の自動作成対応対応青色申告をしない場合に必要な書式
e-Tax 直接送信対応対応PCやスマホから直接申告が完了できる仕組み

青色申告のメリット・デメリット

フリーランスがよく選ぶのは「青色申告」。その理由はシンプルで、節税効果が大きいからです。
具体的には以下のようなメリットがあります。

  • 最大65万円の青色申告特別控除
  • 家族に給与を支払い、経費として計上できる(要事前申請)
  • 30万円未満の資産を一括経費にできる(白色は10万円まで)
  • 赤字を3年間繰り越せる

一方でデメリットは「複式簿記」が必要な点です。とはいえ、会計ソフトを使えば自動で複式簿記に変換してくれるため、簿記の専門知識がなくても大きな負担にはなりません。

注意点として、青色申告をするには開業から2カ月以内に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。「やっぱり青色に切り替えよう」と思っても、後からでは間に合わないので要注意です。

一方の白色申告は「単式簿記」で申告でき、帳簿付けがシンプルという点がメリット。ただし、青色にある65万円控除などの優遇は受けられません。

周囲のフリーランスの多くが青色申告を選ぶのは、「どうせ白色申告でも帳簿を付けなければならないなら節税効果があるほうが得」と判断しているからでしょう。

料金プランと機能のバランス

クラウド会計ソフトは料金も重要なポイントです。
「無料プランでどこまで使えるか」「将来法人化したときにスムーズに移行できるか」といった点は長期的に見て大きな差となります。

たとえば、弥生会計の「やよいの白色申告オンライン」には無料プランがありますが、マネーフォワードやfreeeには無料トライアルはあるものの無料プランは存在しません。

経理ソフトは一度選んだら長い付き合いになります。目先のコストだけでなく、「将来の自分のビジネスに合っているか」を基準に選ぶことが、結果的にストレスの少ない経営につながります。

導入を成功させる4つの秘訣(中小企業・フリーランス共通)

無料トライアルを試す

クラウド会計は、カタログや説明文だけでは本当の使いやすさが分かりません。実際に触ってみて「自分や社員が毎日続けて使えるか」を判断することが重要です。
たとえば、同じ会計ソフトでも「仕訳の自動提案が直感的かどうか」「銀行明細との連携がスムーズかどうか」で印象はまるで違います。フリーランスなら最終的には「肌に合うかどうか」という主観で決めても構いません。中小企業の場合は、複数の担当者が操作することを想定し、最低でも2製品を並行してトライアルしてみると失敗が減ります。これはまるで、車を買うときに試乗をせずに購入を決めてしまうようなもの。数年単位で使うツールだからこそ、実際にハンドルを握ってみることが大切です。

初期設定は専門家に相談

クラウド会計の「地盤」にあたるのが初期設定です。勘定科目の設計や消費税区分の登録、自動仕訳の連携ルール──ここでの誤りは、月次処理や決算時に「地震のようなズレ」として表面化します。
実際、初期設定を自己流で進めてしまった結果、決算時に半年分の仕訳を修正する羽目になった、という相談は少なくありません。逆に、最初に税理士や専門家に相談して設計しておけば、その後の運用は驚くほどスムーズ。これは、家を建てるときに「地盤改良」を怠らないのと同じです。最初の一手間が、長い目で見れば大きな安心につながります。

日々の入力ルールを最初に固める

クラウド会計は便利ですが、入力する人によってルールがバラバラだと、あっという間にデータが混乱します。たとえば「レシートは誰がいつ入力するのか」「証憑はクラウドストレージのどこに保存するのか」「未決済や私費立替はどのように処理するのか」といった細かいルールを最初に決めておくことが重要です。
これはちょうど、チームスポーツでフォーメーションを決めておくようなもの。誰がどこで動くかを定めておけば、後々のミスや二重入力を防げます。「最初のルール作り」に時間を割くことで、毎月の処理が安定し、最終的には経理にかかる時間そのものが減るのです。

電子帳簿保存法など将来の制度対応も意識

クラウド会計は単なる「今の記帳ツール」ではありません。将来の制度改正にも対応できるかどうかを見ておくことが、中長期的な安心につながります。特に電子帳簿保存法のスキャナ保存や電子取引データ保存については、運用フローを最初から意識して設計しておくと後々の混乱を防げます。
これはまさに、家を建てるときに「将来子ども部屋を増築できるように設計しておく」のと同じ発想です。最初の段階で制度対応を視野に入れておけば、ソフトを入れ替えたり運用ルールを大幅変更したりするリスクを避けられます。クラウド会計は数年単位で使うインフラだからこそ、「今」と「未来」を両方見据えた導入が大切なのです。

まとめ

クラウド会計を選ぶポイントは、立場によって少しずつ異なります。

  • 中小企業なら、複数人でのチーム利用や、請求書発行・給与計算など周辺業務との連携がカギになります。経理担当者が休んでも運用が止まらない体制を整えることが大切です。
  • フリーランスであれば、まずはシンプルさとコスト感。自分ひとりで無理なく続けられるかどうかが判断基準になります。
  • 共通して言えることは、導入時の初期設計と、その後の継続的なサポートをどう確保するかが成功の分かれ目です。

クラウド会計は、ただの「入力を効率化する道具」ではありません。たとえるなら、家の基礎工事のような存在です。基盤がしっかりしていれば、その上に安心してビジネスを積み上げていけますし、逆に土台が弱ければ、どんなに立派な建物も不安定になります。

導入のときに少し先を見据えた設計をしておけば、日々の経理だけでなく、資金繰りの見通し、融資や補助金申請、将来の事業拡大まで支えてくれます。クラウド会計は「経理の効率化ツール」ではなく、会社や事業の成長をともに歩むパートナーなのです。

専門家による導入サポートのご案内

もし「自分にはどのソフトが合うのか分からない」「導入の初期設定に不安がある」と感じられたら、専門家に相談するのも一つの方法です。村石税理士事務所では、クラウド会計の導入支援から日常運用のアドバイスまでサポートしています。
お気軽にご相談いただければ、あなたの事業に最適な形でクラウド会計を活用できるようお手伝いします。

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「運用を始めたものの、このままで良いのか心配…」

そんな方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。税理士顧問契約につきましては初回のご相談は無料です。専門家の視点から、安心して運用できる体制づくりをお手伝いいたします。

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